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【同時進行レポート】英語発音の泥沼にあえて首まではまってみた(後編)

2022年02月25日
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こんにちは英語学習オタクの通訳案内士&ライターのTakです。さて、今回は前回に引きつづき発音の話。私はTOEIC870点を取り全国通訳案内士の資格取得者でGoWithGuideの人気ガイド(ほんとうに、自分で言ってはいけません。悲しくなります)ですが、発音に関しては完璧でないというイヤな定評があります。

一生懸命シャドーイングやディクテーションでそれっぽく聞こえるようにした英語をネィティブスピーカーに話してみても、ときおりah?というリアクションが返ってくる状況がつづいていました。

その原因は、長年つづけた耳コピ学習にあるのではないかと疑いをもち、あえて口の形と舌の位置にこだわった発音練習をはじめたの前回のこと。以来、ほとんどとりつかれたように37日間連続、合計2,522分に達しています。その学習のなかでの発見について。話はもう少しつづきます。

by 英語学習オタクの通訳案内士&ライターのTak

 
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突然コラム:発音練習しないでah?リアクションを乗り越えるもう一つの方法

突然ですが、この文をお読みの方には、発音が完璧でない私がどうしてGoWithGuideの人気ガイドになれたか不思議に思うかもしれません。私は発音が完璧でなくても頭はいい!ので、別の方法で ah? 問題を乗りこえてきました。ネィティブスピーカーに何かを話して ah? と返ってきたときは、もう一度同じ言葉をゆっくり言ってもたいてい通じません。もう一度 ah?と返ってきます。いちばんいいのは、別の言葉で言い換えることです。 “Ship.” “Ah?” “Kind of a boat.” “Understand!” という感じです。でも、これはかなりのボキャブラリー力が必要です。もっと簡単な方法があります。それは、同じ単語をスペルで言い直してやればいいのです。 “Ship.” “Ah?” “Ship. S – H – I - P.” “Understand!” と一文字ずつに分けて言えば90%のネィティブスピーカーはわかってくれます。これは発音が完璧でない多くの人に役立つ方法と思うので、ぜひお試しください。

 

発音練習をつづけるうちに、さらに発見したことなど

 
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舌には大きな役割がある

世の中に発音に関して説明された本は少なくありません。でも、多くの本は正しい発音にあまり苦労しない人が書いている気がします。唇の形や舌の位置は「この場所にすると正しい音が出ます」とあるだけです。その理由やメカニズムにふれてあることはあまりありません。

私なんかは、そのようなテキストに書いてあるように試してみて「自分なりに正しい気がするんだけれど、全然音が同じじゃない」という悲しい経験を繰り返してきました。

今回、ELSA SPEAK で練習をつづけて、このような舌の役割も少しわかってきました。

 
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n音の舌は音の流れを誘導する

基本的に t、l、n の3つの音は同じ場所、上の歯の付け根ぐらいにおくといわれます。同じ場所に舌があって、どうして別の音になるかということですが、t音の場合はタップするようにはじく。l音は後ろから息を入れることによって舌と口蓋の間に振動させて音を出す流音という仕組みによるもののようです。

n音はというと、舌先が口蓋の上にさわることにより、音の流れをふさいでしまい鼻から抜けてnの音になります。音が鼻から抜けるという点に関しては日本語も同じなのですが、私たちは完全に唇を閉じたり、歯で音の流れをふさいだりするので、英語の発声方法とは同じ音にならないようです。

 
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s音の舌は音の流れから身を隠す

S音は日本語の「さ・し・す・せ・そ」と大きくは違わないようです。どちらも上下の歯を閉じて、その隙間を息が通り過ぎるときに出る無声音です。ただ、日本語と比べると英語の方が息が通り過ぎる勢いが強いようです。このために舌の位置が大事になります。

じつはこのs音発声時の舌の位置。資料によって違っているんですね。ある本では「舌の歯の後ろにあてろ」。別の本では「上の歯の後ろあたりで宙ぶらりんにしろ」と書かれています。正直これには混乱しました。両方のやりかたで発音を試してみて・・・やっと、わかった!日本語の「さ・し・す・せ・そ」より勢い息を通すためには、のどの音から吹き出された息が邪魔者なく歯に当たらなくてはいけません。このために舌はできるだけ邪魔にならないところに退避して息がストレートに流れるようにするということなのですね。

この感じをつかむためには、舌を上の歯にあててs音を発音してみましょう。見事なまでに息が止まってほとんど音が出ないのがわかります。

このことに気づいて以来 s音の練習ではいい点が出るようになってきました。発音を正しくするには、単に言われたとおりにするのではなく意味を知るのが大切ということを知った次第です。

 
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z音は本当にむずかしい

ELSA SPEAK で発音の練習をはじめて、私がもっとも苦労したのはz音でした td、pb、kg の関係と同じことが s z には言えます。つまり「s の音を出すのと同時にのどをふるわせると z音になる」口で言うのは簡単ですね。これが本当にむずかしい。

歯を閉じて息を流すと s になるのは前の段落で述べたとおりです。これでのどをふるわせれば z になると、やってみようとしても、どうしても私は息を流すのを忘れてしまい音をミックスするのができませんでした。100回も200回も練習してやっと「こんな感じかな」というところまできたのですが、これを単語のなかで、さらには文章のなかでするなんて、とてもとても。と、いうわけで、いまだにNGを出しまくられて完全な z への旅はつづいています。

 
😗
ひょっとこ口のありがたみを知る

sh音(ʃ)、ch音(ʧ)、j音(ʤ)は日本語の「しゅ」「ちゅ」「じゅ」に当たるのですが、私たちが舌打ちするように口先で発音するのに対して、ネィティブ発音はこれらの音もより強く出しているようです。このためには、思い切り唇を「ひょっとこ」のように丸めて突き出すと、よりスムーズな音になります。

ただj音に限っていえば、z音同様に「息を出しながらのどをふるわす」という連携技が必要なので、これもまた私の課題となっています。

Televisionへの長い旅路

こんな風にして、あれやこれやと口を曲げながら正しい発音のための悪戦苦闘をつづけている私ですが、現在まで最難関は television でした。

いやいままでふつうに発音してきた単語だし、出題されたときには軽くクリアできるつもりで発声したら。

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「え? テレビジョンでしょ? AIが聴きとれなかったかな(ということもよく起きます)」ともう一度。OMG! なんといままでに見たこともなかったような10%台のスコアが出てしまいました。その後も、テ・レ・ビ・ジョン↑、テ・レ↓・ビ↑・ジョン↓となんど試しても30%台以上には上がりません。ELSA SPEAK の設定上、私はアメリカで「テレビが見たい」と言ったら確実に ah? という返ってくることになります。

一音ずつ確認してみると、なるほどこれはむずかしい。

tɛləvɪʒən

 

t: 舌を上の歯の付け根にあてて軽くはたく ɛ: 口を大きめに開き「え」と発音する。アクセントは、ここに l: 舌を上の歯の付け根にあて長めに発音する ə: 思い切り無気力に「あー」と言う v: 上の歯を下唇にあてて振動させる ɪ:「い」の口の形で「え」と言おうとする ʒ: 閉じた歯の間に息を通しながらのどをふるわす ə: 思い切り無気力に「あー」と言う n: 舌を上の歯の付け根に宛て前の音をふさぐ

と、これだけの作業を1秒以内にすべてやりとげろというのです。フイギュアスケートの4回転アクセルや体操鉄棒のシャハム懸垂並みの難易度ではないですか?

まず、最初の「テレ」からくせ者です、日本語話者には「て」と「れ」の母音は同じとしか感じられないので、「て」は強くはっきり、「れ」は思い切り無気力に言う。その間にlがあるので、舌を持ち上げるのも忘れてはいけない。 そして、その後、口の形を「い」にしながら「え」と発音するように努力して。 クライマックスは、とにかくむずかしい z音に、思い切り無気力な「あー」を加え n で閉じる。

televisionの一言を発音するために、唇と舌とのどを富士急ハイランドの絶叫マシンのように動かせというのです。とりあえず、私は最大限にゆっくりと発音して慣れようとしましたが、それでもしょっちゅう l を忘れたり v を忘れたり、2つある ə にアクセントが入ったりしてネィティブ度20%が出たりしました。 こういう無慈悲な態度をとられると私はムキになる性格です。絶対マスターしてやると、立ち向かう決心をしました。ゆっくり話したり早くしたり、口を曲げ、表情をゆがめ、恐らくは1,000回以上 television に挑んだでしょう。

そして、ようやく---

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合格点が出せました! でも・・・。

 
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まだz音は完璧ではないようで、Televisionとの長い戦いはつづくのでした。

 

まとめ|英語学習、ときには理詰めも意味がある

このようにして1ヵ月あまり、発音の泥沼に首まで使ってトレーニングしてみました。Covid-19によるパンデミックがまだつづいているなか、あいにくまだネィティブスピーカーと生の会話をして成長度合いを試すことできていません。

ただ、実感値としては「少し発音は改善したかも知れないな」ぐらいの感触を持っています。とりあえず、完璧な発音ができていなくても、何が悪くて伝わらないのかという理屈はつかめたようです。

先日見たある英語指導YouTuberの動画では「発音できないときには、大袈裟に唇と舌の動きを見せてやると、自分がどんな音を出したいかは伝わる」と言っていました。会話のなかで ah? と言われてもどの部分が間違っているのか、ある程度推測できるようになったのは大きな収穫と言えるでしょう。

今回の経験を通して、ネィティブの耳も舌も持っていない人間には、音の出し方を徹底的に理詰めで追究していくのも有意義なことだと思いました。

そしてもちろん、私の発音は完成形にはほど遠いので、泣きながらtelevision と発声しつづける日々はつづくでしょう。いつか後日談をお届けできるのを楽しみにしております。

 

(注1) 一般論ですが、AIを使ったアプリの聴きとりは結構エラーがあるともいいます。確かに ELSA SPEAK で発音を練習していると、ときおり「これはちょっと違うんじゃないか」と感じることもあります。NGがあまり繰り返すようなら、深刻に考えず、つぎの問題にスキップした方がいいかもしれません。AIの指導に若干ブレがあったとしても、発音練習の時間を増やすのは十分に意義があることだと思います。

 

(注2) 今回の原稿を書くために(そして、発音練習の意味を知るために)下の2つのコンテンツが大変に役立ちました。

  1. 英語の正しい発音の仕方(基礎編) 岩村圭南著 研究社発行 (30ページほどの薄い本ですが、口の形と唇についての文字通り基本的な知識を教えてくれます。定価330円と大変にリーズナブルで机の上に常備しておくといい冊子です)
  1. 現役英語英会話講師直伝【アメリカ英語フォニックスマスター講座】でカタカナ英語卒業!独学する前に【英語舌】構築 (udemyのオンライン講座 作成者:May.) (フォニックスの基本となる口の形と舌の動きを音声により指導してくれます。定価は9,600円とやや高めですが、udemyはよく大胆な割引セールを実施しているので、ときおりチェックしてタイミングをはかるといいでしょう。ちなみに私は、80%以上割引の1,840円で購入しました)
 

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