英語を使う仕事はいろいろありますが、英語4技能の中でも「スピーキング力」が必須の通訳案内士。彼らはどうやってその英語力を身に着けたのでしょうか? あなたが目標に到達するためのヒントがここにあるかもしれません。
本日のゲスト :Tsuguyuki(全国通訳案内士)
- 英検1級、全国通訳案内士(英語)
- 2013-2015年 ボランティアガイドとして皇居東御苑を案内し、日本の歴史・文化に関する知識や接客態度等のガイドとしての基本姿勢を身に着ける。
- 2015-2020年 本業のエンジニアを退職後、フリーランスの英語ツアーガイドとして関東を中心に年間100回程度ツアーを実施。(ルートや見どころの説明を独自にアレンジした東京、横浜、鎌倉、箱根、また、東京からの日帰り京都への日帰りツアーなど)
- コロナ禍においては、オンラインツアーを企画したり、様々な教材を利用して英語力の維持・向上に努めている。
- 観光ガイドマーケットプレイスで269件の口コミ平均4.72、GoWithGuideの人気ガイド
Q & A
- 英語を飛躍的に伸ばした時期の目標設定は?
最初は、エンジニアーとして海外留学するための必要条件として英検1級を目指しました。 いくつかの英会話学校に通い、1級に合格するまで5年程度かかりました。 その後、特別な勉強はしませんでしたが、海外駐在・出張や国際会議でもコミュニケーションを通じて英語力は維持されていました。
次に本格的な勉強を始めたのは、退職を控え英語のツアーガイドを目指して通訳案内士の資格にチャレンジした時期でした。 年齢を重ね記憶力も低下していましたが興味の持てる内容を中心に勉強を無理なく継続し、幸運にも1年間程度で合格することができました。
- 一番英語を勉強していた時は、一日何時間くらいやっていましたか?
英検1級を目指していた頃は、英会話学校に通ったり、試験問題集を勉強したりして1日平均1時間程度だったと思います。
駐在員や研究員として米国に通算で2年間程度滞在していた時は、特に勉強しなくても常に英語で生活する環境に置かれていました。
通訳案内士を目指した時期は、英検1級を持っていたことにより英語の筆記試験が免除されたので、一般常識や歴史といった英語以外の勉強を毎日1時間程度やっていました。それ以外に通勤時間を利用した英語のヒアリングを毎日1時間程度続けています。
最近は、新型コロナの影響でツアーガイドの仕事が全くありませんが、毎日1時間程度は、訓練を続けています。
- そのときはどのようなことをやっていましたか?
英検1級を目指していたころは、仕事の後、週2回程度英会話学校に通い2時間程度勉強していました。簡単な日常会話の暗記から始まり、少し上達した後は、時事問題を調査しグループ内で英語で議論するような学習をしたり逐次や同時通訳の訓練を受けました。合わせて英検の試験問題集も勉強しました。
通訳案内士試験の時は、面接試験のための文例集等を試験直前に集中的に勉強し、回答例を何回も読んで暗記したりしていました。面接になれるための直前対策として有料の模擬面接を受けたりしました。 それ以外に興味のある専門分野(理論物理学)の公開講座の動画をダウンロードしてヒアリングを鍛えました。 また、NHKの海外ニュースを聞いて、時事英語のボキャブラリーを増やしました。
最近では、ネットを通じた教材(後述)を活用して英語を話したり聞いたりする訓練を続けています。
- 目標達成に障害はつきもの。どんな障害をどう克服しましたか。
海外留学は実現しませんでしたが、専門分野を深く追求するため英語の専門書を独学しました。その努力が報われ米国には、GEやアルゴンヌ国立研究所に通算2年間ほど滞在し、留学以上に専門知識を深めることができました。その際、仕事や研究の同僚の米国人の英語はよく理解できましたが、マクドナルドで注文をするときや子供と話すときはなかなか理解できず苦労しました。いまでも映画で出てくるこういったシーンの英語は、なかなか理解できず字幕で勉強しています。
通訳案内士の資格試験では、苦手な地理や日本史をネットで入手した教材を使って独学で勉強しましたが、この教材のマラソン動画を見ているうちに日本史が好きになりました。そのおかげでボランティアやツアーガイドで名所の歴史的背景を自信をもって説明できるようになりました。
ツアーガイドに不可欠なスピーキングは、英語を話す機会が少なくなかなか上達しませんでした。そこで、英語のボランティアガイド活動に参加して英語に接する時間を持つように努力しました。
最近は新型コロナの影響でツアーが全くありませんが、英語を維持するため後述するような勉強を継続しており、これまであまり気にしなかった細かい発音や文法への配慮ができるようになったと感じています。
- おすすめの教材や効果的な使い方があれば教えてください。
英検 1 級に関しては、とにかく毎年試験を受けることが大切で試験準備を通じて次第に上達し、いつかは合格できるようになると思います。勉強は試験問題中心でしたが、ヒアリング力の向上には、逐次通訳の訓練が有効でした。 通訳案内士の受験では、英語の筆記試験はありませんでしたが、苦手な歴史の 克 服 に ハ ロ ー 通 訳 ア カ デ ミ ー の マ ラ ソ ン セ ミ ナ ー の 教 材 ( 無 料)をダウンロードして活用しました。 おか げ て 、 今 で は 歴 史 が 好 き に な り YouTube の Historia Mundiの日本史ストリーノートや世界史20話プロジェクトを見て勉強を続けています。 また、英語の聞く力を鍛えるため、ポットキャストの英語ニュース番組を通勤中に聞くようにしました。興味のある内容について無料のオンライン講義を聞くのもよいと思います。 最近は、新型コロナの流行でガイドの仕事がなく英語を維持するために以下のような勉強を続けています。 最初は、You-Tube の英会話シリーズでポーズの間に日本語の内容を英語で話す訓練を続けました。その後、アルク社のトーキングマラソンを始めました。これは AI を利用して会話するもので恥ずかしがらずに会話することが可能です。何度発音しても AI に正しく音声認識してもらえないこともあり、この音声認識にはまだ改善の余地が残っていますが、そういうものだと割り切って付き合っています。AIだけですと飽きますが、この教材にはフィリピン人との無料ネット対面レッスンも月 1 回あって励みになります。 NHK のラジオ英会話も勉強になります。これもアプリをインストールすると都合の良い時間に番組を聞けるので電子版テキストを購入し、iPad でテキストを見ながら番組を聞いています。iPad に GoodNoteという有料アプリをインストールすると手書き入力による英作文の練習も可能です。このアプリは、手書きによる毎日のスケジュール管理にも利用できて大変便利です。
- 勉強のモチベーションが下がった時、どのようにモチベーションを上げていましたか?
私の場合、英検や通訳の資格試験にチャレンジすることでモチベーションを維持できましたが、試験に合格してしまうとモチベーションが下がるので、英語を使って何をしたいかが次のモチベーションとなります。 そこで、通訳案内士試験に合格してからは、ボランティアとして英語ガイドの経験を積みました。いろいろと機会を探しているうちに当時のTripleLights(現在のGoWithGuide)というツアーガイド仲介サイトに出会いました。ここでも最初はなかなかゲストを獲得できませんでしたが、自分のツアーの改善やガイドできる場所を増やすことで次第に多くのゲストに喜んでもらえるようになりました。
最近では、勉強という意識ではなく、興味のある内容に絞って英語を通じて専門知識や教養を高めることでモチベーションを維持しています。それにも疲れた時は映画やコメディーを英語で聞くようにしています。
- 英語をお仕事で使えるレベルになりたいと思っている学習者へのメッセージをお願いします。
最初は、細かい文法や発音、流暢さといった英語術にこだわらない方がよいと思います。伝えるべき内容や知識の方が大切で、それがあれば流暢でなくても様々な言い回しを利用して何とか意思疎通する訓練を積むことができます。そこから先は、実務を通じてや時間のある時を利用してレベルアップができるように思います。
英語はあくまで手段で、英語を使って何をやりたいのかが大切です。そうでないと試験に合格することで目標が失われ、英語の勉強を継続することが難しくなります。私の場合も、退職を控え、これまで維持してきた英語を生かす方法を探す中で通訳案内士の資格を目標としました。それに合格した後は、少しでもよいツアーガイドを目指すことでモチベーションを維持していますし、新型コロナでこの1年ツアーが全くない状態でも英語の勉強だけは続けています。
ゴールへの道は一つではありません。でもそこにはきっと何か共通点もあるはずです。あなたが実践的な英語を身に着けるための学習のヒントが得られるよう、これからも英語の達人をお招きしてお話を聞いていきます。
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