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男の子3人の母が家事をしながら仕事もしながら、英検1級に合格した理由は、コツコツとマジメにつづけることだった

2021年11月8日
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TOEIC900点台と並ぶ英語学習者の大目標に英検1級があります。

このブログの読者からも「英検1級をめざす学び方を知りたい」という声がよく寄せられてきます。

英語学習オタクを自称しながら英検受験経験のないTakには手の出せないテーマです。

そこで今回は、今年1月コロナ禍のなかで、見事英検1級合格を果たした三児の母、Kさんにゲストとして登場していただき、そのバックグラウンドや合格に向けた学び方を教えてもらいました。

帰国子女でも英才教育を受けたわけでもない、家庭と仕事を持つ女性が、英検1級というスーパーな検定を手にするまでの軌跡は、きっと多くの英語学習者にとって共感と希望を与えるものだと思います。

 
Kさんのプロフィール 短大英文科卒。卒業後、多国籍企業の家電・エレクトロニクス企業に入社。設計部門と貿易部門で約10年間勤務する。社内結婚した夫の海外赴任に合わせて2年間、米ニュージャージー州で生活。帰国後、ネーティブに英語が通じなかったのがくやしくて再び学習をはじめる。2013年、TOEIC895点。2015年、国家資格全国通訳案内士資格取得。2020年、英検1級。教育サポーターの仕事をしながら、外国人旅行関係の仕事にもたずさわる(現在はパンデミックのため中断中)、男の子ばかり3人の母。
 

中学ではじめて英語に興味を持ち、短大時代に英検2級取得

静岡の田舎に育った、ごく普通の子どもで小学生のころは英語にふれることもありませんでした。英語との最初の出会いは中学1年の授業。先生が「ハロー!」と言いながら教室に入ってくるのを見たときのことをいまでも思い出します。それは日本人が英語を話しているのを直に見た最初の経験だったんですよ。「カッコいい!とマネをしたのが私の最初の英語体験でした。

学校の成績はあまりよくありませんでした。英語の授業は会話中心で、先生は文法のことをあまり教えてくれません。文を組み立てる順序がわからずにくろうしたことをおぼえています。だれかに奨められてNHKの英語講座を見るようになって「ああ、こういうことなのか」とわかり、それから英語の成績も上がっていきました。

学校は短大の英文科に行きました。勉強をした記憶はほとんどありません。ちょうどバブルの真っ最中でやりたい放題遊び放題の時代です。有名なディスコのジュリアナ東京で赤い羽根を振って踊っていました。

学生時代に、英検の2級は取得しました。でも、このときには英語をもっと勉強したいとか、英語の仕事をしたいとか思う気持ちはほとんどなく、とりあえず私の英語学習は一段落します。

 

職歴はコンシューマー製品の貿易事務を少々

この前にも言いましたが、バブルの真っ最中で就職環境もいまからは想像できないほど良好な時代でした。通っていたのは、一流というほどでもない短大でしたが、同級生はJALや三菱商事などの大企業に当たり前に内定が出ていました。私も、世界的な家電・エレクトロニクス企業に入社することができました。

仕事に関して、正直あのころは「英語はもういいかな?」と思っていたので設計部門を希望してビデオカメラ開発のアシスタントを2年ほどしました。でもやっぱり英語の仕事もしてみたくなり、コンシューマー製品の貿易事務の部署に異動しました。

英語のメールなどは普通にあり、貿易事務の基礎的な単語は必要な職場でしたが、逆に英語で話す機会はあまりない仕事です。そこでも、自分が将来これほど英語にのめり込むとは予想もできないことでした。

 

2年間アメリカ生活も育児に忙殺。英語を学べずくやしい想い

一つの転機は結婚と夫の海外赴任でした。32歳から2年間ほどアメリカのニュージャージーで生活しました。はじめての海外生活だったのですが、あいにく子どもがいちばん手のかかる時期でした。0歳、3歳、6歳、全員男。慣れない場所で子育てをして家事をまわすだけで精一杯でした。

結局、日本人社会からほとんど外に出ることができませんでした。お付き合いのあるのは、子どもの同級生や幼稚園友だちのお母さんばかりで、日本語ばかり話していました。たまに外食をしたときなどに現地の人と会話がありましたが、何を言われているのかわからずに、凹んだ気持ちになりました

 

英語学びたい熱復活。2年間かけてTOEIC600点→800点へ

帰国して、少しずつ子どもも大きくなり手がかからなくなると、アメリカで英語が話せなかったくやしさがよみがえってきました。ちょうどTOEICの人気が上がっていた時代だったんですよね。テレビのニュースステーションなんかでも取り上げられいました。軽い気持ちで準備もしないで受けてみました。最初は600点。まぁまぁの成績ですよね。

ここで「英語を学びたい熱」が再発しました。いちばん下の子が幼稚園に通いはじめるのを待って、英語教室に通いはじめました。TOEICテストにフォーカスしたスクールでした。通いはじめて、目から鱗が落ちました。ネーティブティーチャーの使う英語がボキャブラリーもイントネーションもかっこよくって、あ~こ~なりたい!とあこがれました。

TOEICは2年後に800点を超えました。英検をもう一度受けたのも、この期間だったと思います。スクールに通っていると自然に顔見知りができます。「英検を受けた」「受かった」「落ちた」「再びチャレンジ!」という言葉が耳に入ってくる毎日のなか「やってみようか」と背中を押されたような感じになります。

学生時代の英検2級から20年ぶりぐらいに準1級を受けて、幸い1回で合格できました。

 

低価格のスクールを選んで英語にふれつづけた

それから10年間ぐらい、英語とはつかず離れずの関係でした。地元の低価格な英語教室に通いつづけて、英語力をのばすというよりも落ちないように維持していたような感じでした。

TOEICは全部で20回ぐらい受けたでしょうか? ある時期にはほとんど毎回連続で受験していました。現在までの最高点895点。これぐらいの結果が出るようになると派遣社員として貿易関係の仕事もできるようになりました。

通っていたスクールのティーチャーは全員ネーティブで、とても生徒同士やティーチャーとも仲のいいところでした。学習よりもむしろ雑談が楽しくて会話力の基礎を固めることができました。お花見や飲み会、ボーリング、ディスコなどにもに行ったりしました。ディスコにはが海外からのお客さんも多くて、自然に会話でき遊びながらも確実に英語のセンスはよくなっていったと思います。

 

英検1級最初の試験は惨敗し泣きながら帰る

英検1級をはじめて受けたのは2008年のことでした。このときも友だちからの影響が大きかったですね。「英検1級を受けた」「受かった」「落ちた」「再チャレンジ!」という話を聞きながら、私も受けてみました。

結果は見事に玉砕でした。ほとんどまともに回答できずに、試験時間中から打ちひしがれていました。駅までの帰り道には涙が出てきて、泣いたまま電車に乗っては変に見られるので、となりの駅まで歩いて行ったほどでした。

ショックは大きくて、英検チャレンジは、その後10年近くストップします。

 

オリンピック開催決定をきっかけに通訳案内士資格取得

二つ目の転機が訪れました。2013年に、2020年東京オリンピックの開催が決まったことでした。「オリンピック関係の仕事がしたいな」と思いました。これもまた友だちからの情報で、通訳案内士の資格をとるといいと聞き、そのための勉強をはじめました。

英語1次試験に関しては、TOEICスコアが840点以上だったので免除になりましたが、歴史・地理・一般常識などはわからなかったので(当時は「通訳案内の実務」は試験科目にありませんでした)通訳案内士受験専門のスクールに通って学習し、口述の2次試験対策もしてもらえたので、幸い1回で合格できました。

通訳案内士の資格を取得したあとには、外国人向けバスツアーのチェックインの仕事もしました。早朝にバスターミナルや都心のホテルにカウンターを仮設して、外国人の観光客を迎える仕事です。訪れたお客さんにバスや座席のナンバー、その他の情報をご案内し、時間が来たら、バスまで誘導し、手をふってお見送りしします。繁忙期には10~20台のバスが出発することもあり、出発時間ぎりぎりに現れるお客さんも多く、職場はいつもてんやわんやでした。

そのなかで、外国の方に英語で話しかけるハードルが低くなり、ごく普通に話ができるようになったのが、この仕事をした大きなメリットかもしれません。

 

英検1級試験に再チャレンジも4回連続不合格

私の視野に再び英検1級が入ってきたのも、この通訳案内士受験がきっかけになりました。通訳案内士受験でお世話になったスクールが英検対策講座も解説していました。あるときに「資格取得者は割引になる」というキャンペーンをはじめて、その案内が来たので(最初の受験失敗のトラウマはまだ残っていましたが)再チャレンジしてみようという気持ちになりました。

スクールに通った効果は絶大でした。それまで、漠然と英語力向上を考えていたのですが、「どのような問題が出る」から「どのような準備をすればいい」かという考え方を伝えていただき、そこから後の学習が無理ないものとなりました。

とはいうものの、やはり英検1級のバーは低くはありません。合格までにさらに4回の失敗が繰り返されました。

 

教材はスタンダードなものを徹底的に

私が学習に使った教材に特殊なものはありません。単語に関しては、王道とも言える「英検1級 でる順パス単 (旺文社英検書)」の完全マスターをめざしました。

 

英検1級を受かるには超難易度の高い知識が必要という俗説がありますが私の場合は、この一冊に集中して漏れがでないようにすることで、試験問題にも対応できました。

2次試験の面接対策には、上田一三先生ほかによる「英検1級 面接大特訓(Jリサーチ出版)」が役に立ちました。

 

「テーマを与えられ、それに従ったプレゼンテーションする」2次試験の口述では、話の順序が大変に重要でした。テーマを理解した上で、自分の考えを明確にするために、どのような順番で話をすればいちばんわかりやすいかを考えて、出題されそうな問題に関しては繰り返し発声して自然に口に出るようにしました。

 

日常と学習を切り離すためカフェや図書館で学習した

学習の仕方で心がけたのは、自宅でなくカフェや図書館ですることでした。それというのも、私は主婦なので自宅にいると自然に家事モードになってしまいます。学習しようと思っていても、つい部屋やトイレの掃除をはじめたり、お菓子を食べたりテレビを見たりしてしまいそうになります。

「今日は学習に集中する」と決めて家を出て、カフェや図書館に行くようにしました。「今日は必ず、ここまでやる、終わらなかったら帰らない」と決めて自分を甘やかさずに、1日5時間ぐらいかけ、自宅に戻ったら英検のことを忘れるというコントラストをつけることで、目標に沿った学習ができたと思います。

もう一つ、ふり返ってみると英語学習のいろんな節目で「友だちの助けで」前に進めた私ですが、今回も同じ。Twitterに英語学習専用のアカウントをつくり、同じ目標を持つ人たちと情報交換をしたり学習方法を教わったりしました。学習が壁にぶつかって、つらいときにいちばんわかってくれるのはやはり同じ境遇で努力している人たちだなと実感しました。

 

パンデミックに振り回されながらもついに合格!

2020年からパンデミックのなかで、私も大きな影響を受けました。数年間つづけてきた外国人向け旅行関係の仕事がゼロになり、英検もまた緊急事態宣言を受けて試験日が延期になり、当初の予定どおりの動きができませんでした。

一次に合格したあとには通っていたスクールで二次対策を受けるつもりでしたが、通学が不可能になり、オンラインでの受講も不安だったので独学で挑戦することになりました。

苦労もあっただけに合格を知ったときには本当にうれしい気持ちになりました。2級→準1級→1級と進んでいくために結局何十年もかかってしまいましたが、無理はしないでコツコツと前に進みつづけた結果が出たと感じました。

英検1級を取ってよかったと思えたのは、もともと自信のなかった私が少しでも自信を持てるようになったことでしょうか?いろんな人から「すごいね」といってもらえると「やっぱり、すごいんだ」と鼻高々な気分になれます。

 

今後の目標は?TOEIC990点と保育士資格と言っちゃおうかな?

今後の目標。英語に関しては、英検はとりあえず最高ランクにまで上がれましたが、TOEICの方はまだ895点と中途半端なところで止まっています。できるだけ早く900点以上、いつかはきっと990点を実現したいと願っています。

それと同時に、いまパートタイムで学校や幼稚園のサポーターの仕事もしているのですが、そちらの仕事もおもしろくなってきました。結果、保育士試験受験のための準備をはじめて、この10月には最初の受験をしてみました。何年かかけて一科目ずつ受験できる資格なので、長期的な見通しでトライしていこうと思っています。

2021年、1年間延期された東京オリンピックの時には、旅行代理店の紹介で短期間、羽田空港税関で仕事をしました。射撃選手の入出国に関して銃などの持ち込みが必要となるため、組織委員会の方々とともに動き、税関職員や警察などとの通訳をするのが仕事の中心でした。

オリンピック同様に、私の英語学習の軌跡も紆余曲折の連続でしたが、ときに壁にぶつかったとして、前に進むつづけたら、どこかにたどりつくんだなぁと実感しているところです。

 

まとめfrom Tak:大きな夢もまじめにコツコツ挑めば道は開かれる

今回Kさんのお話をうかがって実感したのは「まじめにコツコツ」つづけることの大きな力です。

正直、今日まで英検1級なんていうものは、かなり特別な才能の持ち主だけが受かるものと思いこんでいました。

しかし今回は、ごく普通のお母さんがごく普通に努力を重ねて、この大目標を実現したことにむしろビックリ!

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(インタビューより)

Tak「英検1級受かる人って、一単語30文字ぐらいある一生使わないような単語を何万語も記憶してるんですよね~」

Kさん「あはは、そんなことないですよぉ」

 

「千里の道も一歩から」「塵も積もれば山となる」。本当なんだなぁと痛感しました。

夢を求めるプロセスは、本来楽しいものであるはずだから、その課程は長いほどいいかもしれません。

たくさんの人がコツコツと努力を重ねて大きな目標にたどりつけるといいですよね。

 

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